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東京高等裁判所 昭和57年(ネ)2361号 判決 1983年3月29日

控訴人 甲野花子

被控訴人 東京高等検察庁検事長

被控訴人補助参加人 乙山一郎

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取り消す。控訴人が本籍福島市〇〇町字〇〇町〇〇番地亡乙山太郎の子であることを確認する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求めた。被控訴人は当審口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面の提出もしない。被控訴人補助参加代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠関係は、次のとおり付加するほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

控訴代理人は次のように述べた。

原判決は、控訴人の本件訴えを不適法として却下したが、控訴人が亡乙山太郎の子であることが確認されれば、同人の遺産に対し控訴人が相続分を有することが明らかとなり、同人の長男である補助参加人との間における右遺産をめぐる法律関係も明らかとなるから、本件訴えは確認の利益があり、また最高裁判所昭和四五年七月一五日判決(民事判例集二四巻七号八六一頁)は、父母ともに死亡した子が、死亡した父又は母のいずれであろうと、その者との親子関係の存否確認について、検察官を相手方として訴えを提起することを認めているから、原判決は不当である。

理由

当裁判所は、原審と同様、控訴人の本件父子関係存在確認の訴えを不適法として却下すべきものと判断する。その理由は以下に附加する外原判決の理由を引用する。

法律は、親子という身分関係を基礎として、親権、相続その他の権利義務を定めるが、右権利義務の発生根拠となる親子関係は、単に生理的つながりによる自然血縁的親子関係をいうのではなく、一定の法律上の要件を備えたいわゆる法律上の親子関係でなければならない。そして民法は、妻が婚姻中に懐胎した子を嫡出子として、当然に右夫婦との間の法律上の親子関係の発生を認める(民法七七二条)けれども、婚姻関係にない男女の間に出生した婚外子とその父については、父の任意の認知(同法七七九条)又は裁判による認知(同法七八九条)があつて始めて法律上の父子関係の発生を認めるのである。したがつて、子が父の遺産について相続権を有するとするには、その子が、母が婚姻中に懐胎した嫡出子であるか又は父の認知又は裁判による認知を受けた婚外子でなければならない。

ところで父子関係存在確認の訴えも右の事柄を前提として戸籍の記載が真実と異なる等その身分関係を明らかにする利益が認められる場合には、これを容認すべきことは前掲判例の示すところであるが、本件はこのような場合には該当せず、単なる自然血縁上の父子関係の確認を求める訴えであることその主張自体から明らかであるから、これを認める余地はないものといわなければならず本件訴えは不適法というほかない。

以上の次第で、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 中島恒 真栄田哲 塩谷雄)

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